詩>パソコンの電源を

とある深夜
パソコンの電源を切る
蛍光灯スタンドのスイッチを消す
トイレに入る
冷蔵庫を開け水を飲む
ベッドに横たわる
可もなく不可もなく

次の日の真夜中
パソコンと蛍光灯を消し
トイレに入る
冷蔵庫から水を取り出して飲む
ベッドに入る
ささやかながら幸福である
と言うべきかどうか知らない

またある深更
パソコンを切る
スタンドの明かりを消す
トイレに入った後 水を飲む
ベッドで横になる
この凡庸な日々をいつまでつづけることが
できるだろうかと考える

つづく夜更け
パソコンを終了させ蛍光灯をオフにし
トイレに入り水を飲みベッドにもぐり込み
何らかのカタチでこんな日常が
やがては壊れていく宿命に思いを巡らす
前にもこんなことを考えていた

さらに未明
パソコンの電源を落とす
蛍光灯スタンドのスイッチを切る
トイレに駆け込む
冷蔵庫からペットボトルを取り出しコップに注いで飲み干す
ベッドに倒れ込み 延々と考える

毎日は毎日変わりつづける
僕の心の中で身体の中で身辺でこの国の中で世界で
地球の中で太陽系の中で銀河系の中で宇宙全体で
確実にそして着実に

いつか終焉は来るという自明
そして始まりも

時間をさかのぼることも
時間にとどまることもできない
世界は正に時間の潮流に流されてある

いかなる幸福も生命の全停止を以て裏切られるのか
それとも

誰かのことを誰もが忘却してしまったら…
しかし 宇宙が認識されるために
人類が誕生したという解釈は身勝手だ

充足した最期とはどんなことなのか

ときには悶々として夜明けを迎える

そして 次の夜も
パソコンの電源を---