詩>あの人は
懐かしい横顔と出逢った
過去に同じ時間を過ごしたことのある人だと思うが
一体誰だったのか
記憶をたどってみるものの見当もつかない
どうやら向こうもこちらに見覚えがあるらしく
ちらちらと視線を投げてよこす
どこで?名前は?他には誰が一緒だった?
近しかったようなそうでもないような
素性がわかれば昔話も尽きず
旧交を温めるなんてことになるかもしれない
ほどなくしきりとほほ笑みかけてきた
人を惹きつけずにはおかない笑顔だ
しかしどうしても思い出せない
いっそ駆け寄って訊いてみようか
覚えていなかったことを咎めるだろうか
もやもやした気持ちが高まるうち
目が醒めた その瞬間
ほほ笑みも姿形も消し飛んでしまった
果たしてあの人との関係は?
少し胸苦しい気分のまま
洗面台の前に立った
あの人は誰?
それから再び夢に現れることはない