詩>それは胸の奥深くの

それは胸の奥深くの小さな痛みからはじまった
昼のけだるく無意味な時間の窪みで
何かしら言い知れない不安に気付いたのは
それからしばらくしてからのことだった

まもなく メインストリートにある大型書店の文庫本棚の前で
駅の反対側ホームの人込みの中
すれ違った車の助手席に
とある横顔を目撃したような気がした

すでに その人が誰なのか
気付きはじめている
それ故 懦(おそ)れている

心の烈しさに戸惑いながら
せめて 夢で再会できたら
と 慎ましく希うだけで