詩>不安な睡眠

無音の時間が水圧となって迫ってくる
ヒトは眠る間サカナになる
エラで小さく呼吸し
ときおり指先をヒレにして
ピラピラ動かしてみせる
特別なんの意味があるわけでもなく

ゆらめく寒色のゆめうつつ
部屋はコンクリートの水槽なのか
いたるところ
カキガラやフジツボカメノテなどが
重なり合いながら蔓延り
天井に密生する海綿のまん中で
赤紫のイソギンチャクが大輪の華を咲かせる

街中を巡回するクラゲがのぞき込んいく
遮光カーテンの隙間
いま 時刻はきっかり真直ぐである

看守る眼差しもなく
刻々
夜具はサンゴに覆われていく