詩>一室の出来事

一室でぼくらは会った
知らぬ者同士

本当の名前さえわからないのに
抱き合い キスをした

飽きるほどキスをして脱がし合った
裸になって延々と触り合った
それから
お互いをまさぐり合った
うなじから爪先まで

「かわいいね」とぼくが言った
「ありがとう」彼女が答えた

指と指を絡ませ
「好き?」という問いを軽く無視して
彼女はほほえんでよこす

「好きだよ」とささやくと
「私も」と言う
それが嘘だということはわかっている

服を着始め 今一度彼女を見た
横顔がとてもきれいだった
こんなカタチでなければ
彼女のようなヒトと出会うことはないだろう
あらためて欲情した

一室を出ると
どこの誰なのかもわからないまま
ぼくらは別れた