詩>愛したい

愛したい
 
 
ヒトを愛したい
ヒトを愛したために悩み苦しみ抜いて
食事があまり咽喉を通らず
そのせいですっかりやつれてしまいたい

ベッドで本を読んでいても
寝起きに歯みがきをしていても
通勤電車の吊革にぶら下がっていても
居間でテレビを見ていても
仕事の電話を受けていても
友人とコーヒーショップで談笑していても
そのヒトのことが頭から離れず
一日悶々としていたい

休日にはたまらず車を出して
そのヒトの住む町に出掛けたい
行き先もわからずぐるぐると
その町のありとあらゆる道を走りまわった挙句
旧(ふる)くからあるような喫茶店に入り
ひょっとして現れるかもしれないと待ちつづけながら
そのヒトとの愉しいひとときを妄想したい
 
胸が痛くなるほどヒトを愛したい
そのヒトを想うだけで
心がいっぱいになってしまいたい
そのヒトの面影があふれかえり
そのほかの雑多な事柄はすべて忘れ去ってしまえるように
これといって何もない日々に
時間(とき)をしっかりと刻み込むことができるように