詩>夜の水底で

夜の水底で
 
 
夜がますます深くなっていくようだ
 
窓を少し開けると
風の破片が頬に冷たく刺さった
 
通りに人影も絶えた
電柱の辺りで虫の声がするものの
庭先からの声は消えてからしばらく経つ
雨でも降り出すんだろうか
 
空には月も星もなく
それは不安な赤味を帯びている
 
この地上から人類がいなくなった夜はどんなだろう
 
誰かが声を殺して泣いている

聞こえはしないがそんな気がする夜だ