詩>春風

風に抱かれた綿毛のように
晴れ上がった青空をわたり
想い出のあのひとはどこまでいってしまったのか
抽出しの片隅にしまいこんだ一枚の写真に
さわやかな微笑みを残したままで

春めく風景に身も心も漂白されて
新しき予感を告げる聲々へ
そっと耳を傾ける

見上げると
地球の空は冬物の洗濯もののはためきでいっぱいだ

あのひともきっと
季節を愛しみながら
洗濯に精を出しているだろう

ゆれて ねじれて
ぼくの日常も
物干し竿にはためく