詩>鍵穴

心の鍵穴に
キーを差し込んだまま
居なくなってしまった あの人

一組の机と椅子のほか
何もない 部屋

窓から見える
午睡のような風景は
ぼくではない
芥子粒ほどに聞こえる
街の喧噪は
ぼくの妄執でない

塵の積もった床と
脱色したテーブルクロスに
季節も時刻も不明な
老いた光が射し込む

心の鍵穴に
キーを差し込まれたまま
寡黙にぼくは錆びおちていく