何かを待っている/いつまで経っても何かでしかない/何かを/君は

君は


その日いつもの通りオフィスに現れた君は
正体不明の顔たちにとり囲まれた途端に
何もかもが嫌になってしまった
君としてしか有り得ないところの君自身を含めて

問題の多くを留保したままで
徒に年月を重ねてきた君は
これから一体何処へ行こうというのか
何一つ解答を引き出せなかったそのものから
逃れるようにして 何処へ

ビル街の頭上に窺く空に希うように
とりとめのない望みに
君が託そうとしたものは何であったろう

否、君は唯希うばかりだった
そうして静かに憤り盲いていた
現在存ることの意味を
口腔いっぱいに詰め込んで
咽喉を垂直に伸ばし
君は朝の路地蔭に聾唖のように佇った

風景が君から遠退くのではない
君が風景から遠退いたのだ

何かを待っている
いつまで経っても何かでしかない
何かを
君は