詩>部屋の女

   一人で

湯を沸かす
ティーカップとスプーンを揃える
レモンにさくりとナイフを入れる
スライスした一枚を口に含む
-顰めたその顔が愛くるしい

カップティーパックをおとし
湯を注ぐ
馨しい夜が部屋いっぱいにひろがる
そこにレモンスライスを浮かべる
ショートケーキを頬張る
   一人で

物思いに耽る
カセットテープが止まる
うつ伏せる
こらえる

ショートケーキを口にする
   一人で

笑ってみる
愚痴ってみる
週刊誌を抛る
指先をながめる

肩を抱く
髪を掻き上げる
闇を指さす
仰向けにねころがる
脚をばたつかせる
   一人で

鏡を覗く
遠くを感じる
自分がわからない
タバコをふかす
アルコールが欲しくなる
窓を開ける

鏡に見入る
鏡が歪む
自分が愛しい

椅子に凭れる
ぬいぐるみを引き寄せる
一人ごちる
言葉が逆流する
抱きしめてから
椅子の上に据える

眠くなる
眠くなる

----- 眠りに墜ちる