詩>五月の空

引っ越し祝いにポインセチアの鉢植えをもらった
けれども 世話の仕方がわからず半年で枯らしてしまった

捨てようにも捨てられなくてとっておいたその鉢に
いくつか埋めておいた橙のたねの一つが
おととし芽を出した
それを丹精に育ててきた

高層アパートのベランダで
くすんだ空を遠景にした萌黄色の葉を
ぽつねんとながめていると
思いもかけず心がからっぽになっていくような気がする
そのうち 無性に
手摺りをこえ飛びおりてしまいたくなったりする
だが 手摺りに足をかけたことは一度もない

降りつづく小糠雨のせいで
身体の敏感な部分にまで黴が生えてきそうだ