2005-06-24 詩>八月の空 空から誰かがこちらを窺っている そんな気がして目を上げたとき 入道雲の陰へと咄嗟に何ものかが身を隠したようなのだが あれは近しい死者のうちの誰かだったのか それとも迷妄する神か 法悦する悪魔だったか 八月の空には厚みがある だから 地上に熱がこもるのだろう ベランダの鉢植えのブーゲンビリアがしおれて そこに蜘蛛が一条の糸でぶらさがると 向こうの地平線のうえに音のない落雷があった 流れいく雲にのり 死者たちは八月の空を駆けめぐる 空から誰かがこちらを窺っている そんな気がしていても もう二度と空を見上げない