詩>世界が寝静まった時刻の

世界が寝静まった時刻の浴槽は棺桶に似ている
自分のものではないかのように投げ出された身体が
湯水に溶け込んでいくとき
タイルの上に一枚の剃刀が冴え冴えと存在する

心優しき者は風に抱かれ
声を殺して泣いている
夜の帳の向こう
の舞台裏

到るところに不正と欺策と無関心と
棄てたり放っておいたりして
山積みにされてはならないことなのに

ただ気分だけが不穏な季節の底に靄っている
下着のように気軽に換えることのできない暗鬱な気分が
全くの気分だけが