詩>死んだ人とよく出くわすよ

死んだ人とよく出くわすよ
今日も車で街へ出掛けたとき
国道の橋の上で白い新型車とすれ違った
あれは去年逝ったS伯父だ

背景の空に霞のような雲がひろがっていて
片肘を窓枠にかけ
大きな欠伸をひとつ
確かめる間もなく過ぎ去った

頭上からの陽射しが妙に非現実的だった
ひょっとしてそれも
伯父の演出だったのかもしれない

ひとを驚かすのが好きな伯父が
無聊なあの世を抜け出して来たのか
今度はどんな手を使うのやら

※無聊>ぶりょう:退屈でつまらないこと