詩>十二月の空

十年以上もの久闊があったヒトと遇った
休日のメインストリートを往き交う
形も色も動きもさまざまな群衆のなかで
お互いを見つけあった

あんなにも親しい間柄だったのに
なぜ絶交してしまったのか
どうしても思い出せなかったのだが
長い歳月の空隙を一気に超え
再会を歓んでそれぞれ背中と尻を叩きあった

それからふたりでどうしたのか
きれいに忘れてしまった
たぶん近くの喫茶店でコーヒーを飲むかして
積もり積もった話でもしただろう
あるいはそのまま宵の繁華街にくり出し
小料理屋やバーを何軒かはしごしたかもしれない

ほとんど何も覚えていないのだが
ビル街の向こうに十字型をした空が
鄙びた映画館のスクリーンのようにして
寒々とあったのが
妙な具合に瞼の裏に焼きついている
それはおそらく
なつかしいヒトと出会う
何分か前に見ていた空だ