俺は女の物知らずの横っ面をひっぱたいてやりたい気持ちを

一〇〇パーセント天然


ウィスキーグラスにジンをなみなみと注ぎ
俺は一気にそれを呷ったのだ
そのとき 夜はjazzyにサックスを泣かせていた

カウンターのボーイが顔を近づけてきて言ったっけ
----‐女を騙すのにその手は古いですよ
俺は何も言わず
もう一杯、と一本指で合図してやった
それをまた一気に飲み干そうとしてつっかえた
それでもこうなったらやけっぱちだ
気持ちを整えて祈るように残りを流し込んだ
それから女の肩に手をやり
力を込め身体を支えてストゥールから下りたのだった

女はやさし気な顔をして
俺の滅茶苦茶な面構えを覗き込みながら言った
大丈夫なの?ってね
大丈夫なんかであるもんか
俺は女の物知らずの横っ面をひっぱたいてやりたい気持ちを
やっとのことで抑えた

面倒な付き合いはもうごめんさ
俺に抱かれたいか
抱かれるのは嫌か
俺は愚かな憤りに爪先を青白く光らせた

便器に向かい俺は豪奢に吐いた
鈍い痛みの日常や
ドブ川のような夜
肉体や仕草など女に関する淡い記憶
そうして
自分の過去や未来まで吐き棄ててしまいそうになった

カウンターに戻ると
女はもうそこにはいなかった
それは予想していたことだ
別段どうということもない

俺はボーイを呼んだ
----‐同じものをおつくりしますか?
----‐いや、オレンジジュース 果汁100%のやつを