詩>永く暑い夜

永い夜だ 永いばかりでなく
どこまでも暗く盲いた夜だ
腐った二枚貝
赤錆びた自転車でありたいと思う夜だ

闇底に沈む街並の
どこかの部屋で女が笑っている
饐えた温気に口で息をしながら
美しい裸体が男の傍らで笑っている

街灯だけが星座のように取り残され
地下のバーやスナックで
青白い海月の 男や女たちが交錯する

公園の砂場から聞こえてくる声を潜めた会話
何かが起ころうとしているのか
何もかも均衡を失った夜だ