詩>癇癪のあと

その不用意な言動に
いきなり怒りが込み上げた

声を荒げ 物に当たり
自ら殻に籠もった

そうして
たちまち自己嫌悪に陥った

なにもかもがどうでもいいような
そんな気がし始めた

どうでもよくなると
こうして生きていることが
ひどくつまらないことに思えた

そればかりか
これまで生きてきたことのすべてさえ
薄っぺらに見えた

思えば自分には何もない

而して
一体これから何があろう

生きてきたことが無駄なら
これ以上生きることも無駄



新聞に目を通すと
テロ撲滅を口実に
虐殺と迫害をつづけるテロ国家の
新たな謀殺が記事になっていた

殺された子どもたち
殺される子どもたち

殺す側に殺すという実感がない
それは全く以ってとんでもないことだ

骨が飛び出し 脚が引きちぎられ
愛らしかった顔が歪にひしゃげ

いつか見たテレビでは
動転した父親が
娘の裂けた腹部から飛び出した臓物を
必死に戻し入れようとしていた

死は斯くも生臭く生々しい

実行するモノは多少なりそれを実感しているが
指揮するモノ
命令するモノには想像すらできない

「声高に戦闘を説くモノよ
お前がまず前線に立ってみよ」
「このモノ等の威勢のいい詭弁に惑わされてはならない
標的を定めるのはお前だ」

哀しみと怒りが胸腔をめぐる



いつしか夜が深くなっている
久しぶりに酒が飲みたくなった

電気を点けずに台所に入り
梅酒の炭酸割とつまみを用意して自室に戻った